バリューアベレージングとは?ドルコスト平均法との違いと注意点
投資の世界では、様々な戦略が存在しますが、その中でも長期的な視点で安定した運用を目指す投資家にとって、バリューアベレージングは有効な選択肢の一つとなります。しかし、バリューアベレージングは、ドルコスト平均法と似ているようで、実は異なる点が多く存在します。
この記事では、バリューアベレージングの仕組みやメリット・デメリット、ドルコスト平均法との違い、そして運用する際の注意点などを詳しく解説していきます。投資初心者の方でも理解しやすいように、具体的な例を用いて説明していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
バリューアベレージングとは何か?
バリューアベレージングとは、市場の価格変動を利用して平均取得単価を下げる投資戦略です。ドルコスト平均法と同様に、一定期間ごとに投資を行う点は共通していますが、毎月積み立てる金額が異なる点が大きな違いです。
バリューアベレージングでは、毎月積み立てる金額を固定するのではなく、目標とするポートフォリオの成長率に合わせて調整します。具体的には、目標とするポートフォリオの価値が目標成長率を下回っている場合は、より多く投資し、上回っている場合は、投資額を減らす、または投資を行わないようにします。
例えば、
- 目標成長率が毎月10%
- 現在のポートフォリオの価値が100万円
- 今月の目標ポートフォリオの価値は110万円
- 現在のポートフォリオの価値が115万円の場合、追加投資は必要ない
このように、バリューアベレージングは、市場の価格変動に応じて投資額を柔軟に調整することで、常に目標とする成長率に近づけるように設計された戦略と言えます。
バリューアベレージングの計算方法
バリューアベレージングの計算方法は、以下の公式を用います。
- Vt = C * t * (1 + R)t
ここで、
- Vt: t期における目標ポートフォリオの価値
- C: 毎期の目標積み立て金額
- t: 期間
- R: 投資と積み立ての平均成長率
例として、
- 毎月10万円を積み立てる
- 投資の年間成長率を5%
- 積み立ての年間成長率を0%
- 10年間積み立てを行う
この場合、
- R = (5% + 0%) / 2 = 2.5%
- V120 = 10万円 * 120 * (1 + 2.5%)120 ≒ 259万円
となります。つまり、この条件下で10年間積み立てると、目標ポートフォリオの価値は約259万円となる計算です。
バリューアベレージングの計算は、Excelなどの表計算ソフトや、オンラインの計算ツールを利用すると便利です。
バリューアベレージングのメリットとデメリット
バリューアベレージングには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
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平均取得単価を下げられる: バリューアベレージングは、市場が下落している時により多くの投資を行うため、平均取得単価を下げることができます。平均取得単価が低いほど、将来の売却益が大きくなる可能性が高まります。
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投資の心理的な負担を軽減: バリューアベレージングでは、市場が下落している時でも、積極的に投資を行うことで、心理的な負担を軽減することができます。市場の価格変動に一喜一憂せず、冷静に投資を続けられます。
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時間分散投資の効果: バリューアベレージングは、時間分散投資の効果も期待できます。市場が下落している時に投資を行うことで、市場のボラティリティを吸収し、リスクを抑える効果があります。
デメリット
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常に市場価格を監視する必要がある: バリューアベレージングでは、毎月積み立てる金額を目標成長率に合わせて調整する必要があるため、常に市場価格を監視する必要があります。市場の動向を常に把握し、適切な投資判断を行うことが重要です。
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投資判断の根拠が必要: バリューアベレージングでは、投資判断の根拠となる分析が必要です。投資対象の企業分析や市場分析を行い、投資判断を行うことが重要です。
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市場が下落している場合は効果が薄くなる: 市場が下落し続けている場合は、バリューアベレージングの効果は薄くなります。市場が下落している時に、目標とする成長率に到達することは難しく、追加投資が必要になるケースもあります。
バリューアベレージングとドルコスト平均法の違い
バリューアベレージングとドルコスト平均法は、どちらも一定期間ごとに投資を行う戦略ですが、毎月積み立てる金額の決め方が異なります。
ドルコスト平均法
ドルコスト平均法は、毎月一定金額を投資する戦略です。市場が上昇している時も、下落している時も、同じ金額を投資します。
例えば、
- 毎月10万円を積み立て
- 投資対象は、株式
ドルコスト平均法では、市場が上昇している時には、少ない数の株式を購入し、市場が下落している時には、より多くの数の株式を購入します。これにより、平均取得単価が下がると期待できます。
バリューアベレージングとドルコスト平均法の比較
手法 | 毎月積み立てる金額 | 投資額の調整 |
---|---|---|
ドルコスト平均法 | 一定金額 | 行わない |
バリューアベレージング | 目標とするポートフォリオの成長率に合わせて調整 | 行う |
バリューアベレージングは、ドルコスト平均法よりも、市場の価格変動に敏感に反応し、目標とするポートフォリオの成長率に近づけやすいというメリットがあります。しかし、常に市場価格を監視する必要があり、投資判断の根拠となる分析が必要というデメリットもあります。
バリューアベレージングを利用する際の注意点
バリューアベレージングは、有効な投資戦略ですが、運用する際にはいくつかの注意点を理解しておく必要があります。
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投資対象の選定と分析: バリューアベレージングを行うためには、まず、投資対象となる資産を慎重に選定し、分析する必要があります。投資対象となる資産の将来的な成長性やリスクなどを評価し、自身の投資目標とリスク許容度に見合った資産を選定することが重要です。
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投資期間と市場動向: バリューアベレージングは、長期的な投資戦略です。短期的な市場の変動に惑わされず、長期的な視点で投資を行うことが重要です。また、市場の動向を常に把握し、必要に応じて投資戦略を修正していくことも大切です。
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投資金額の調整: バリューアベレージングでは、目標とするポートフォリオの成長率に応じて、毎月積み立てる金額を調整する必要があります。目標成長率の設定や投資金額の調整は、自身の財務状況や投資目標を考慮して行うようにしましょう。
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リスクと対策: バリューアベレージングは、市場の価格変動を利用した戦略であるため、リスクを伴うことを理解しておきましょう。市場が下落し続けている場合は、追加投資が必要となり、投資金額が大きくなる可能性もあります。リスクを最小限に抑えるためには、分散投資を行い、十分な資金を余裕資金として保有しておくことが大切です。
バリューアベレージングが適している投資家
バリューアベレージングは、以下のような投資家に適した戦略と言えるでしょう。
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投資初心者: バリューアベレージングは、市場の価格変動に一喜一憂せず、冷静に投資を続けられるため、投資初心者の方にとって有効な戦略です。
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長期投資を希望する人: バリューアベレージングは、長期的な視点で投資を行う戦略です。長期投資を希望する投資家にとって、有効な選択肢となります。
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市場変動に強い投資家: バリューアベレージングは、市場の価格変動に敏感に反応する戦略です。市場変動に強い投資家であれば、バリューアベレージングを活用することで、より高いリターンを得ることが期待できます。
まとめ
バリューアベレージングは、市場の価格変動を利用して平均取得単価を下げる長期的な投資戦略です。ドルコスト平均法と似ていますが、毎月積み立てる金額を目標とするポートフォリオの成長率に合わせて調整する点が異なります。
バリューアベレージングには、平均取得単価を下げられる、投資の心理的な負担を軽減できる、時間分散投資の効果があるといったメリットがあります。一方で、常に市場価格を監視する必要がある、投資判断の根拠となる分析が必要、市場が下落し続けている場合は効果が薄くなるといったデメリットも存在します。
バリューアベレージングを採用する際には、メリットとデメリットを理解した上で、自身の投資目標やリスク許容度、財務状況などを考慮して判断する必要があります。バリューアベレージングは、長期的な視点で安定した運用を目指す投資家にとって、有効な選択肢の一つですが、適切な知識と分析に基づいて運用することが重要です。